介護保険法改正が実施行され、“3年に一度の大変化”の波もようやく一息ついたように思われる2018年4月。一方、3年後(或いはもっと先の未来)を見据えた次なる動きが既に開始されており、その代表的な議論の一つが、財務省が主宰する“財政制度分科会”だと言えるでしょう。“国の金庫番”とも言える財務省が介護業界に対し、どのような視点を持っているのか?今回は特に事業者として注視すべき内容をトピックスとして採り上げ、お届けしてまいります。

では、早速、中身に移ってまいりましょう。財政性分科会の資料においては、「論点」→「(論点を踏まえた)改革の方向性(案)」という構成で8つのポイントが公表されています。先ずはケアマネジメントに関する案についてです。

【論点】
○ 介護保険サービスの利⽤にあたっては⼀定の利⽤者負担を求めているが、居宅介護⽀援については、ケアマネジメントの利⽤機会を確保する観点などから利⽤者負担が設定されていない。
○ ケアマネジメントの主な業務は、初回のケアプラン作成の後、毎⽉のモニタリング(要⽀援は3か⽉ごと)と数か⽉ごとの評価やケアプランの変更等となる。こうした業務については利⽤者負担がないことで利⽤者側からケアマネジャーの業務の質についてのチェックが働きにくい構造になっていると考えられる。
○ また特養などの施設サービス計画の策定等に係る費⽤は基本サービス費の⼀部として利⽤者負担が存在。既に⼀定の利⽤者負担の下に介護サービスが利⽤されていることを踏まえれば、居宅介護⽀援への利⽤者負担は、サービスの利⽤の⼤きな障害にはならないと考えられる⼀⽅、利⽤者が、より⼀層ケアマネジャーの質のチェックを⾏っていくことに資すると考えられる。

【改⾰の⽅向性】(案)
○保険者におけるケアプランチェックと相まってケアマネジメントの質の向上を図る観点から、居宅介護⽀援に利⽤者負担を設ける必要。

ここ数年、法改正の度に提唱されては流れている本テーマ。質の向上の視点、及び、財政健全化の視点から、今回も再び視点として提示されていることを、事業者としてはあらためて認識しておく必要があるのではないでしょうか。続いて2つ目の「論点」→「(論点を踏まえた)改革の方向性(案)」を見てまいりましょう。

【論点】
〇 軽度者(要⽀援、要介護1・2)は⽣活援助サービスの利⽤割合が⼤きいが、こうした⽣活⽀援に関わるサービス等は、国による⼀律の基準によるサービス提供よりも、地域の実情に応じた多様な主体によるサービス提供が望ましい。
〇 平成27年度から要⽀援者に対する訪問・通所介護は、介護予防・⽇常⽣活⽀援総合事業に移⾏し、利⽤者の状態像や地域の実情に応じて、国による基準に基づく専⾨的なサービスだけでなく、基準を緩和したサービスや住⺠主体のサービスを実施する⽅向。
〇 平成29年度に全市町村が総合事業へ移⾏しているが、総合事業を実施している事業所で⾒ると、まだ多くが移⾏前と同様の国による基準に基づくサービスの実施にとどまっている。(以下、改革方向性案へ)

【改⾰の⽅向性】(案)
〇 今後、先⾏した⾃治体の例も踏まえ、⼀定の時期までに利⽤者の実情によって専⾨的なサービスが必要な特段の場合を除き、基本的に緩和型や住⺠主体のサービスに移⾏するなどの⽅針を国において定めることで、⼀層の総合事業の推進を図るべき。
〇 その際、単独では緩和型サービスの基準や住⺠主体の取組の企画・策定が難しい⾃治体にあっては、都道府県が積極的に⽀援することにより、複数⾃治体にまたがる事業の実施も検討する必要がある。
〇 また、残された要介護1・2の者の⽣活援助サービス等の更なる地域⽀援事業への移⾏も進めていく必要。

事業者としては主に3番目の改革案「要介護1・2の者の⽣活援助サービス等の更なる地域⽀援事業への移⾏」という部分を頭に置いておく必要があるかもしれません。続いては3つ目、「施設サービスの質量負担適正化」についてです。

【論点】
○ 平成17年制度改正において、施設サービスにおける⾷費や個室の居住費(室料+光熱⽔費)を介護保険給付の対象外とする制度⾒直しを実施(多床室については光熱⽔費のみ給付対象外とし、また低所得者には補⾜給付を創設)。
○ 平成27年度介護報酬改定において、特養⽼⼈ホームの多床室の室料負担を基本サービス費から除く⾒直しを⾏ったが、介護⽼⼈保健施設、介護療養病床、新設される介護医療院については、室料相当分が介護保険給付の基本サービス費に含まれたままとなっている。

【改⾰の⽅向性】(案)
○ 在宅と施設の公平性を確保する等の観点から、これらの施設(⽼健施設、介護医療院、介護療養型医療施設の多床室)の多床室の室料相当額についても基本サービス費から除外する⾒直しを⾏う必要。

確かに同じ施設サービスとして、特別養護老人ホームとそれ以外の施設において報酬設定上の考え方が揃っていない、という点については、論点として理解出来なくもないように思われます。続いて4つ目、「保険者機能に関するインセンティブ」についてです。

【論点】
○ 昨年成⽴した改正介護保険法に基づき、平成30年度予算においては、都道府県・市町村の保険者機能強化のための新たな交付⾦を創設している(保険者機能強化推進交付⾦30年度予算額:200億円)。
○ 今後、こうしたインセンティブを活⽤することで、各市町村が保険者機能を発揮し、介護費の地域差縮減に努めていくことが求められる。

【改⾰の⽅向性】(案)
○ この交付⾦については、市町村・都道府県の保険者機能強化に向けた体制整備や⾃⽴⽀援・重度化防⽌の取組などの複数の指標の成績に応じて交付することとなっていることから、この指標の達成状況について「⾒える化」を実施するとともに、達成状況がよい⾃治体の取組を分析し、全国展開するとともに、達成状況がよくない⾃治体については、その原因を分析し、都道府県・市町村の取組を⽀援すべき。
○ 合わせて、こうした取組をさらに進めるため、第8期介護保険事業計画期間の始期である平成33年度から調整交付⾦のインセンティブとしての活⽤を進めるべき。

今回は「交付金」として自治体予算に“上乗せ”する形でのインセンティブとなりましたが、財務省としてはより一層本取り組みに対する意欲を高めることを目的に、「頑張らなければそもそもの予算が削られてしまうかもしれない」という形式に持っていくべく、今までと同様「調整交付金の活用」を提案していることを事業者としては認識しておく必要があるでしょう。

続いては5つ目の論点「訪問介護に置ける頻回のサービス利用適正化」についてです。こちらは目を通すだけで充分だと思われます。

【論点】
○ 訪問介護の⽣活援助サービスについては、⽉100回以上の利⽤など平均を⼤きく上回る利⽤が存在。
○ こうしたことを踏まえ、平成30年度から、「全国平均利⽤回数+2標準偏差」の⽣活援助サービスについては、ケアプランの保険者への届け出を義務づけ、保険者によるケアプランの点検や地域ケア会議における検証を⾏うこととし、不適切な事例については是正を促すこととしたところ(施⾏は平成30年10⽉から)。

【改⾰の⽅向性】(案)
○ 国において制度施⾏までに、保険者によるケアプランチェックのための指針等を早急に策定・周知するとともに、今後、ケアプラン点検の実績も踏まえ、利⽤者の状態像に応じたサービスの利⽤回数や内容等についての標準化を進める必要。

続いて6つ目の論点、5つ目の論点にも通じる内容、「在宅サービスについての保険者等の積極関与」についてです。

【論点】
○ 訪問介護・通所介護の被保険者⼀⼈当たり給付費については、性・年齢階級(5歳刻み)・地域区分を調整してもなお、全国平均と最⼤値との間で3倍程度の差が存在。
○ ⼀⽅で、訪問介護・通所介護をはじめとした居宅サービスについては、総量規制や公募制などの⾃治体がサービス供給量をコントロールする仕組みが⼗分でない(平成30年度から条件付与の仕組みを創設)。

【改⾰の⽅向性】(案)
○ 今後、介護費の地域差を縮減に向けて保険者機能を強化していくことが必要であり、在宅サービスについても総量規制や公募制などのサービスの供給量を⾃治体がコントロールできる仕組みを導⼊すべき。

調整済み被保険者一人当たり給付月額について、訪問介護については保険者全体の全国平均値が約1,900円のところ最大約6,300円の保険者があったり、通所介護については全国平均値が約3,500円のところ最大約9,400円の自治体があったり等、確かに保険者によって大きなバラつきが生まれている部分は否めないところです。事業者としては「自身の保険者はどのレベルにいるのか(高いのか低いのか)、厚生労働省が作成している「地域包括ケア「見える化」システム」を活用して確認しておかれることをおススメします。
続いて7つ目の論点、「介護事業所・施設の経営の効率化について」です。

【論点】
〇介護サービス事業者の事業所別の規模と経営状況との関係を⾒ると、規模が⼤きいほど経費の効率化余地などが⾼いことから経営状況も良好なことが伺える。⼀部の営利企業においては経営主体の合併等により規模拡⼤は図られている。営利企業とその他の経営主体では同列ではない部分もあるが、介護サービス事業全体で⾒た場合、介護サービスの経営主体は⼩規模な法⼈が多いことが伺える。

【改⾰の⽅向性】(案)
○ 介護サービス事業者の経営の効率化・安定化と、今後も担い⼿が減少していく中、⼈材の確保・有効活⽤やキャリアパスの形成によるサービスの質の向上などの観点から、介護サービスの経営主体の統合・再編等を促すための施策を講じていくべき。
実際、「単独で生き残る事は難しい」という想いから、小規模事業者同士が「合従連衡」「大同団結」する動きが具体的に出始めています。同様の危機感をお持ちの皆様は、それらの動きを具体的に注視しておくこともおススメする次第です。

それでは最後となつ8つ目、「介護保険の利用者負担」に関する論点及び改革の方向性(案)についてです。

【論点】
〇介護保険の財源構造は、所得の⾼い者を除き基本的に1割の利⽤者負担を求めた上で、残りの給付費を公費と保険料で半分ずつ負担する構造であり、保険料は65歳以上の者(1号被保険者)と40〜64歳の者(2号被保険者)により負担されている。
〇また、65歳以上の者の要介護認定率は2割弱であり、介護サービスを実際に利⽤している者と保険料のみを負担している者が存在。
〇今後、介護費⽤は経済の伸びを超えて⼤幅に増加することが⾒込まれる中で、若年者の保険料負担の伸びの抑制や、⾼齢者間でのサービス利⽤者と保険料負担との均衡を図ることが必要。

【改⾰の⽅向性】(案)
○ 制度の持続可能性や給付と負担のバランスを確保する観点から、介護保険サービスの利⽤者負担を原則2割とするなど、段階的に引き上げていく必要。
「受益者負担」という観点から考えると、本論点は不可避のテーマである、と感じる次第です。

以上、財政制度分科会内の資料「社会保障」より、介護業界に直接関係のある部分のみを抜粋してお伝えさせていただきました。本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が叫ばれる我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。
事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。

八王子市の介護経営に強い社労士(社会保険労務士)よしざわ社労士・社会福祉士事務所 吉澤 努